焼け跡とみずたまり

牧場王やら色々

リバーサルポイントに愛をこめて【牧場王】

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zatsuka-etsu.hatenablog.com

今回はリバーサルポイント、及びフィールについて思いを巡らせてみます。例のようにネタバレ等お気を付けください。

 

越える(ほどでもない)壁

リバーサルポイント(以下リバーサル*1)は作中でも随一のやられ役と言っていいでしょう。描かれた4レースは全てフィールもしくはファムに敗れていますし、勝鞍である宝塚記念は具体的な描写がありません。11巻の登場馬紹介の「層の薄い03世代のリーダー」という肩書からも、フィールの抱えていた「戦うべきライバルの不在」という悩みを体現するキャラだったのではないかと考えられるのではないでしょうか。一応9巻のJCでは古馬のトップであることが指摘されていますし、その後の有馬では苦戦を強いらせていたあたり、噛み応えが全くないわけでは無いにせよ、フィールを国内に縛り付けるほどの訴求力を持つほどの存在ではなかったことは間違いないと思います。

 

影の中で生きる者

ここまで書いてきて、リバーサルと似たような経歴を持つキャラがいるのを思い出しました。トゥーカッターです。主人公達の1つ上の世代、宝塚記念勝馬、JC回避等々*2。しかし、WC編での活躍があるとはいえキャラ立ち・魅力がはっきりしていますし、空気気味なリバーサルとはえらい違いです。

 

トゥーカッターの持つ魅力の根幹には彼の持つ悲劇性があります。ピーターⅡと戦う場が与えられず、’92年世代のトップとして認められるために打倒カスケードを狙うも、カスケードに“挑む”立場にされ挙句カスケードもまた訳アリの様子で、彼のプライドは傷つけられます。自身を正当に評価してくれるだけの根拠を求める様が、そしてそのコンプレックスを越えてワクチンの勝利のために己を捧げた勇敢さが、読者の胸を打ったのでしょう。

 

一方のリバーサルのバックグラウンドはそう多く語られることはないまま、物語から退場することになります。JC、そして有馬でファムに引導を渡され、以後誰かに語られることはほとんどありません。しかし、短く語られたバックグラウンドこそが彼だけの輝きであり、シリーズ全体で語られる美学の一側面なのではないでしょうか。

 

自覚的に生きること

W5巻で飯富さんが語る彼の強さは自覚と覚悟だとされます。古馬として、フィールの壁として、日本の大将として、かくあるべき姿を持っていることで実力以上を発揮できるのです(ただし、JCで初めてフィールは王としての自覚が芽生えたと飯富さんは語っていますが、9巻で描かれたのはむしろ空位の王座につく虚しさや文太との約束であるので、リバーサルの強さの秘訣も彼の主観であるかもしれません)。ですが、後輩たちはその壁を乗り越え更なる舞台へ歩みを進めていくので、そこにもはや彼の居場所はありません。

 

そんなリバーサルですが、意外にもフィールとの会話シーンは全くありません。出番の少なさ故にファムとの絡み以外はほとんど独り言、あるいはそもそもセリフ描写なしという状態なので、彼がフィールをどう思っていたかすら測れません。辛うじて存在するフィールへの言及は「またポッキリいっちまうぜ」という骨折を揶揄するもののみ。不謹慎すぎる。

なんだか消化不良なので、ここからは妄想の世界です。そういうのが苦手な方はブラウザバックをお願いします。

 

 

 

 

あなたの気を惹きたいから

リバーサルとフィールの接点が少ないのは前述した通りですが、トレセンも違うので都合の良い(?)空間もないですし、実は脚質も明言されていないので、有馬や「状況をひっくり返す」という実況から差し馬だと仮定します*3が、この場合やはり先行脚質のフィールと被るところがありません。

 

こういった前提条件の中で我々が夢を観るならば、やはり「フィールからの反応の無さ」をある種のラブコメ文脈…「反応を見るためにアプローチをかけ続けるリバーサルと、相手の想いに気付きつつも面白がって様子を見てるフィール」という風に誤読解釈するのがベストでしょう。この場合フィールはヒロイン的立場になる訳です。で、いざフィールがリアクションを取ると多分リバーサル君は怯んで相手のペースに乗せられそうですね。名は体を表すとはよく言ったものです。

 

シリアス方面の点で言うと、もっとお互いのプライベートな部分というか、レースへの志みたいなのをさらけ出してたらいいなぁと思います。が、少なくともフィールにとってリバーサルはそれに値しない馬だと思われていた訳ですから、何とも寂しい話です。カスケードの宿敵がワクチンでないように、自分が強く意識している相手に強く意識されていないというのはかなり残酷です。本当の自分を見てもらうにはそれ相応の魅力を得るか強引に相手を振り向かせる必要がありますが、リバーサルに残された手段は後者しかないように思えます。ただ、フィールは結構聡明なので、非道徳的な方法でしかアプローチできなかったと見透かされ、軽蔑されそうです(これはこれでありか…?)。

 

 

 

いずれにせよ、リバーサルのポリシーは深く描かれなかったため、我々には様々な解釈の余地が残されています。あなただけのリバーサルポイントを見つけてみよう(なんだこのオチ)。

*1:本編で略称呼ばれたことあったっけ?と思ったら10巻とW1巻にはありました

*2:ただし、スタポケによるとリバーサルはG1一勝なのに対し、トゥーカッターは菊・天秋も勝っていますから、この時点でも一歩劣った所があるのかもしれません…

*3:スタポケコラボだと先行系特殊脚質。ちなみに専用のものではなくニトロニクスの流用