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『鉄デザVol.4』寄稿しました&おまけ #C103

 

昨年に引き続き、かぼちゃ工房さんの『鉄道とデザイン』に寄稿させて頂きました。今回は「デザインの交差」について色々考察しています。このページでは執筆を経ての感想の他、昨年の『Vol.3』掲載のジョイフルトレイン記事の補足などについてお届けしていきます。

 

 

『Vol.4』:執筆に至るまでのあれこれ

『Vol.3』発売後から「『Vol.4』で何を書くべきか」というのを考えていた(主催が何も言っていないのに)のですが、結局今回のテーマである「デザインの交差」に落ち着きました。ただ、他の執筆者の皆様方のような使用フォントや歴史などについての知識を私は有していないため、最低限ソースにあたりつつも基本的には私の感覚に基づいた内容になってしまいました。もう少し客観的・理論的に話がしたかった感じは否めませんが、「何がとは言いにくいけど違和感がここに潜んでいる気がする!」という意思表示ができたことは個人的には良かったなと思います。

 

 

また、私の手柄では全くないのですが、『Vol.4』は雑誌形式が最も活かされている号なのではないかと思っています。しゅときゅうさん・MIZUASOBIさんなど連載記事を執筆された方がいらっしゃるというのもありますが、私の記事は既刊とのリンクを意識したものにしたためです。先述したように私はフォントなどデザイン設計の具体的な要素に関する知識を欠いていますし、それをPC上で再現したり設計意図を分析したりといったことも難しい訳です。しかし、既刊で紹介済みの事例であれば私が改めて解説する必要はなくなりますし、内容が冗長になることを防止できます。そして、4冊目となった『鉄デザ』に、シリーズとしての意味というか連続性を見出すことができるのではないかと考え、先達の知識にフリーライドする方針となりました。そういう訳で、既刊をお持ちでない方は是非お買い求めくださいね(宣伝)

 

それと、今回あまり深堀りできなかったのが、境界駅や乗り換え改札など管理を委託している場所のデザインに関することです。新横浜駅だけでなく羽沢横浜国大駅などもっと紹介できたら良かったなと、残念に思ってます。境界駅のデザインはいずれ『鉄デザ』上で詳しく取り扱ってみたい(もらいたい)話題なのでとりあえずこの辺で。

 

『Vol.3』:2023年以降のジョイフルトレインの形

前回はジョイフルトレインのトレンドの変化について考察しましたが、そこから更に時局の変化があったので、こちらに追記させて頂きます。

 

着地営業型の配置見直し

2023年のトピックとして、『リゾートあすなろ』から『ひなび(陽旅)』・『SATONO』への転用や、『いさぶろう・しんぺい』から『かんぱち・いちろく』への転用が発表されたことが挙げられます。『いさしん』は災害不通のため運休が続いていましたし、『あすなろ』も運行区間の一つだった津軽線が被災し存廃が議論されています。コロナ禍による経営体力の消耗もあり、復旧まで飼い殺しにするより必要な所に再配置したほうが良いと判断したのかもしれません。ただ、津軽線と同時に寸断された五能線及び『リゾートしらかみ』は同年内に運転再開していますし、首都圏でもそれを盛んに宣伝していたのを考えると、『あすなろ』自体の乗車率・経営への貢献度が芳しくなかったのかなと邪推してしまいます。

 

一方で、『ひなび』は当面は釜石線での運用がメインとなるようで、現行ダイヤでは遠野駅での長時間停車があるなど廃止となった『SL銀河』を踏襲している点が見受けられます。『SATONO』も現在観光列車の設定が無い陸羽東線只見線や12/24で引退した『フルーティアふくしま』の代替として運用されるのではないかと目されています。こうした経年の浅い車両や新車の投入が今後も続くのかどうかは大変気になるところです。特に、『しらかみ』”くまげら”編成などのキハ40系列は、普通列車用としてはJR東から全廃済みですから、そう遠くないうちに引退の話があってもおかしくありません。『フルーティア』・『SL銀河』の場合、運行終了発表からラストランまで1年以上の猶予があった訳で、リリースもなく廃車という流れにはならないと思いますが、新車投入の有無も含めて注視していきたい所です。

 

「のってたのしい列車」の料金改定

『ひなび』『SATONO』と『かんぱち・いちろく』の共通点として、グリーン車の設置も挙げられます。後者は詳細が発表されていないので言及できませんが、『ひなび』『SATONO』に関してはクロスシートからボックス席への改造によって定員が減少しており、その埋め合わせとして単価の引き上げを狙ったのではないかと考えられます。

 

これらのデビュー発表と前後して、JR東が発表したのが「のってたのしい列車」の料金改定です。通常の普通列車指定席料金は通常期530円であったのに対し、2010年代後半に登場した列車は指定席料金が通年840円に設定されていました。そして、10月以降は従来530円だった列車も840円に統一しようという話です(同時に、指定席グリーン券も値上げ)。要は「指定席を連結してるただの快速列車」と「観光客向けに凝った内装に改造して定員も減らした臨時列車」を明確に区別しようということだと思います。

また、「のったの」自体の収益性の向上も当然あるでしょう。JR西や九州と異なり特急列車化・全席グリーン化してない(=18きっぷで乗れる)だけ温情ではありますが、それでも従来の価格設定では維持できない厳しい状況なのかなと思われます。新幹線でも車内販売アテンダント不足が騒がれている昨今、観光列車にどれだけの人員が割けるのかという問題*1もありますし、「新幹線への誘客だけしてくれればそれで十分」とはいかないんだろうなという感じです。”くまげら”に新車が投入されるなら、他編成同様セルフ売店になるのか”橅”編成のようなカウンターが設置されるのか、そこで地方の人手不足の実態が把握できるかもしれません。

なんだかんだ『Vol.3』についての内容が長くなってしまったのでこの辺で失礼いたします。是非ご一読ください。

kabochakoubou.booth.pm

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*1:新幹線も「のったの」もJR東日本サービスクリエーションのアテンダントが乗務している