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グリーン車を待つE233系0番台:過渡期に生まれた形態差とパターン

2015年に中央線へのグリーン車連結が発表されて以降、E233系0番台はグリーンサービス開始に向けて、あるいは時局の変化を受けて、今日に至るまで様々な変化を遂げてきました。そして、過渡期ならではの形態差がチラホラ発生し、写真的にも模型的にも面白い状態となったと言えます。今回は発生した変更点と特徴的な編成について、時系列順に簡単におさらいしていきます。なお、事実と異なる点・書き洩らしがありましたらコメント等でご一報ください。尚、青編成絡みのトピックは調査不足のためあまり触れませんので、悪しからず。

前照灯LED化(Ⅰ) 2016~

製造時は前照灯としてHIDライトを設置していましたが、この時期から角型LED*1への換装事例*2が見られるようになります。

が、実際のところLED化が急速に進むことはなく、後述する各種改造と並行するようにポツポツと換装されていました。

 

ホーム検知器設置 2018~

1000番台以降の車両では標準装備となっていた(2000・3000番台除く)ホーム検知器ですが、0番台にも追設される運びとなりました。2018年10月にT10編成*3に改造が施された後、同年内にT8編成*4にも設置された模様です。

 

トイレ設置等グリーン車組み込み準備工事 2019~2023?

17年に延期が決定しつつも、18年に「23年度末のサービス開始に向け随時既存車両にトイレ設置を行う」と発表され、グリーン車組み込みに向けた各種改造が実施されることになります。これまではせいぜいドアステッカーの貼り方や優先席マークが変わる程度だった中央線E233系に大変革が訪れたのです。

具体的な改造メニューは主に以下の2点で*5

・トイレをサハE233-500(T編成、組成位置を-200ユニットと入換)もしくはモハE233-200(H編成、改造後はモハE233-800に改番)に設置

・モハE232-200にSIV設置

そして、上述したホーム検知器の設置も同時に行われた……と言いたいところですが、実は例外も少なからず発生し、0番台の形態差の増加へと繋がっていきます。ここからは、具体的な編成と異端ポイントを紹介していきましょう。

 

T8・10・40編成:新津製・ホーム検知器のみ設置

T8編成(20年7月29日) パンタ位置などから編成組み換え前なのがわかる…わかりますか?

トイレ設置以前に登場したT8・10はともかく、19年8月にTK出場したT40編成はなぜかホーム検知器を設置することなく豊田に戻ってきました。また、T40は角型LED換装済み、T10は19年7月頃から東京オリパララッピングが施されるなど、各編成いい感じに差別化されることになります。この時期はT24編成が中央線130周年記念で全面ラッピング仕様になっていたこともあり、既にかなりバリエーション豊かな顔ぶれとなっていました。

 

なお、T8・10は21年内にグリーン対応改造を受け、ノーマル形態となっています。

模型的な点だと、24年2月現在では検知器付き新津車は製品化されておらず、工夫が必要です。というか、KATOの0番台は全て東急製をプロトタイプとしているため、T編成の多数派である新津製はTOMIXをベースにした方が賢明かと思われます。

運用面では、20年度改正をもって早朝深夜の快速線緩行線直通運転が廃止になりました。トイレ利用解禁と入れ違いでの廃止でしたが、それまでに登場したトイレ設置編成も各停運用に充当されていたので、ご安心ください(?)

☆  ☆  ☆  ☆  ☆

 

さて、正確な時期は不明(2024-1-31時点)ですが、20年頃*6からドアコック標記が窓上に追加された編成が登場し始め、少しラグはあったものの改造済みの編成も施工されます。ホームドア設置駅でもドアコック位置を視認するための措置なはずですが、この時点では中央線内のホームドア整備計画は公表されておらず、気が早いなあという感じです。。同時に改造メニューに追加されたらしいTASCやホーム検知器含め、「どうせ今後必要になるんだし、入場したタイミングでまとめてやった方がいいね」ということなのでしょうか。ただ、コロナ禍による減収と半導体不足の影響か、後述するような例外的な編成も登場することに…

 

2/12追記:ドア引き込まれ注意喚起ステッカー(Ⅰ) 2019?~

ameblo.jp

正確な時期は不明ですが、この頃から乗降用ドアの両サイドにステッカーが追加されます。とれたんずをあしらうなど、子どもへの注意喚起が目的のようです。

模型でも内装をやらない人には関係なさそうですが、マステを細く切ったりして簡易に再現してもよさそうです(このサイズ感だとちゃんとしたデータ作っても印刷精度が…)。

 

T71編成登場 2020年6月11日

T71編成FRP形状変更・角型LED・ホーム検知器装備済み・ラジオアンテナ省略など

H59編成・209-1000に続いて登場した、改造工事に伴う予備車。有名な編成なので今更詳細を語る必要はありませんが、新造車故に6000・8000番台あたりの要素が多々見られるのが特徴です。その一方で車内LCDは4:3の画面だったりと既存の0番台にあわせた時代錯誤感ある点も多い変な車両です。

既に作例をいくつか拝見しておりますが、TOMIXの6000番台(旧製品)をベースにしてる方が多い様子。TOMIXの床下は0番台ベースになっている(他番台ではエラー)ため、車体塗装さえできればハードルは低めかも?

 

室内灯LED化 2020年~

T71編成は最新の車両らしく白色LEDの室内灯を装備しており、これに追随する形で既存車両も蛍光灯から続々と換装していくことになります。

ドアコック表記追加と同様に車両センター等でも施工できるポイントなので、編成ごとのどの時期に交換されたかといったデータがあまりなく、模型鉄泣かせなポイントです。一方で、蛍光灯色(黄白色)と白色という色合いの違いも大きく、再現する際はできる限り下調べしたいところ……

 

この時点で、主な形態差発生ポイントは以下の5点になりました。

  • ホーム検知器有無
  • トイレ有無
  • ドアコック標記追加有無(上二つとセット)
  • 前照灯更新有無
  • 室内灯更新有無

これに加えて、製造会社由来の形態差・行き先表示LEDのメーカー違いもあり、線路モニタリング装置搭載対応T13・36編成*7やみんな大好き青661編成*8などの特殊仕様編成を含めるとかなりのパターンがあることがおわかりいただけるでしょうか。

 

ちなみに、20年秋には東京アドベンチャーラインのPRの一環で青463編成が青661と共に中央線に出張してきました。21年時には検知器が搭載され相方も青666に変更。八高線富士急行線への入線を果たすなどなかなかにアドベンチャーしていました。

検知器設置前の仕様でテックステーションから製品化されていますが、前照灯プリズムがHIDを再現したものの流用・川重製が製品化されておらず青661の再現がハードといった問題があるので、意外と手間がかかります。

 

☆  ☆  ☆  ☆  ☆

 

そして、22年7月。遂にJ-TREC横浜からサロE233/232-0が姿を現します。T71編成以来2年ぶり、長男であるH43編成から16歳差となる0番台の新車が豊田にやってきたのです。

これ以降、H57・T24・H53・56編成が順番にサロ試運転用編成になるべく定期運用から離脱します。各編成の詳細は後述。

 

2/12追記:ドア引き込まれ注意喚起ステッカー(Ⅱ) 2022~

とれたんず、まさかのリストラ。なんかこの時期からしれっとデザインが変更されていました。誰もちゃんと記録していないため掲示開始も貼り替えも不明で、公式もプレスを出していないので、本当に謎です(南武線では掲出開始のプレスが出ています)。とれたんずのキャラ展開は続いてるのに…

 

中編成ワンマン対応・P編成登場 2022

写真左手前側の編成には車体側面用の監視カメラが搭載されている。右側の青461(22年10月当時)と異なり検知器も設置済みだが、画角的にわかりにくい…

青編成のうち青460・463・465・466・467編成は、アドベンチャーライン区間のワンマン化に伴う改造により、それぞれP518・521・523・524・525編成に生まれ変わりました。青編成が塩尻奥多摩方のクハE232の車番基準で付番されていたのに対し、P編成は東京方のクハE233-500の車番を基準としています。翌23年1月には青463→P521以外の各編成にもラッピング&HM*9が用意され、青梅以北は基本専用編成で統一されることに。系統分離と改造により富士急行線直通非対応になったため原則青梅以南では運用されませんが、なんだかんだ中央線で代走するケースも散見されました。

模型で再現する場合は、KATOの10-1622にホビーセンターカトー等の監視カメラパーツと動力、現行の各種ラッピングは世田谷車両センターのインレタ…という流れになります。ホーム検知器のことを考えるとテックステーション製品をベースにするのは難しそうです。

 

余談ですが、改造対象外となった青461・462・464はいずれも川重製です。何か不都合でもあったんですかね?H編成含め分割併合機能の必要性が薄れる中、青編成の今後はかなり不透明です。

 

前照灯LED化(Ⅱ) 2023~

23年3月頃から、「前照灯丸型(花型)LEDに換装されている*10」という報告が上がり始めます。この時点ではHIDの置き換えを目的にしていたのだと思われますが、同年9月以降角型LED化されていた編成も丸型に変更されていき、界隈{どこ?}が一時騒然となりました。年末には最後まで残っていたT10・H53編成の丸型LED換装も確認され、HID搭載編成は消滅形態となりました。

製造時の丸いHIDに形状が近いこともあり概ね好評だと思われますが、ロービームの猫目っぽいところにコレジャナイ感を抱いてしまうので、なんだかんだ角型も悪くないのでは?と個人的には思います。いずれにせよ、模型での再現には一工夫必要そうです。

T1編成(20年10月、改造後OM出場時)

T1編成(23年10月) 角型LED

T1編成(23年12月30日) 11月下旬?に丸型LEDに換装

 

所属標記省略 2023~

LED換装と並行して、11月頃から「八トタ」標記の省略が確認されます*11。どの編成がいつ削除されたかは正直わからないので、再現したい編成がある方はXでくまなく調べるしかなさそうです…(余力があれば後日調査します)

 

グリーン製造数削減 2023

従来のプレスで「58編成に連結」とされていたグリーン車ですが、しれっと製造数が114両57編成分に変更*12されていました。予備車確保目的で増備されたT71編成はともかく、H59編成にトイレが設置されたこともあってどの編成が改造対象外になるのか傍目では予測できない状況でした。そんな折にこのニュースが届いたことで、またも界隈はざわつくことになります。その後、11月30日にH51編成が長野入場したことにより、未改造のT40・H49編成にはグリーン車が連結されないのが確定的になります。

こうして各編成の今後が概ね固まった、24年1月末時点での特徴的な編成達を見ていきましょう。

 

H49編成:東急製・検知器無・トイレ無・角型LED

23年12月に前照灯更新が確認されるまでは、15年の優先席マーク更新時の形態を最後まで維持した編成で、24年1月末でも所属標記が残存しているなど2020年以前の多数派に近い状態です。あまりにもオーソドックスな形態なので実感がわきませんが、そう遠くないうちに中央線からは退きそうなので、しっかり記録したいところ。

模型としてもオーソドックスすぎるので、E351系189系が居た時代でもグリーン試運転との合わせでも遊べます。KATOのトイレ仕様(10-1621/1622)より前の製品をベースにすればサクッと作れそうです。TOMIXのH編成はややレアなので、やりにくそう。ネタ運用絡みの話だと、通快武蔵五日市・高麗川行の最終日にはH50編成とペアを組んで充当されています。東急製同士のペアなので特別感はさほどですが…

 

 

T23編成:新津製・検知器無・トイレ設置・丸型LED

現状最も異端と思しき編成です。トイレのみを設置しホーム検知器のない原型FRPを維持している点が最大の特徴です。恐らくホームドア非対応でドアコック標記も追加されていないので、「半導体不足でホームドアどころじゃないし後回しでいいや」ということなのかもしれません。前照灯は23年3月中旬ごろにHIDから換装されています。例によって11月頃に所属標記が削除された模様。ちなみに、H44編成も出場直後はこれに近い形態でしたが*13、運用入りまでにホーム検知器が追設されています。

模型的な面だと、23年10月11日の臨時ダイヤで「591T→9591M 快速相模湖行」に充当されたのが最大のトピックでしょうか。相模湖延長運転で唯一の原型FRP編成で話題になりましたが、私は撮り逃して折り返しだけ抑えた結果が上の写真です。現状トイレ付サハが製品化されてない上、製品化される頃には原型FRPクハが枯渇してそうなので、模型でやるなら覚悟が必要そうです(さらに、近年のTOMIXはステンレス塗装を塗り分けるようになったので、新旧製品を混ぜると差が目に付く可能性も指摘されます)。

 

2/15追記:検知器設置&ドアコック標記追加に伴い、この形態は消滅した模様。さびしいね

 

T24・H53・56・57編成グリーン車組み込み編成、全て東急製

自走できないサロの伴走車として選ばれた4編成ですが、H56はH53が通常運用に復帰後に伴走車となった*14ため、同時に存在したのは3編成までとなります。組成したサロと形態差は以下の通り。

  • H57:サロ‐1、8連試運転実施、HID→角型LED、所属標記省略(23年12月頃から?)
  • T24:サロ‐2、12連固定、HID→丸型LED、所属標記残存(24年2月現在)
  • H53:サロ‐3・4、-5から-12までは2ユニット纏めて組成(いわゆるグランドE233)、HID→丸型LED(-11・12組成以降)、サロ組成当初から所属標記省略*15
  • H56:サロ-13以降、2ユニット纏めて組成、サロ組成当初から丸型LED&所属標記省略

サロ‐3以降は所属標記が省略された状態で落成したこともあり、T24の仕様はまさしく過渡期ならではのものと考えられます。H57の前照灯も今後換装される可能性があり、グランドE233は確実に営業運転時には見られなくなるため、いずれにせよ今後1年見られるかどうか状況であるため、記録はお早めに。

T24・H57は23年11月頃に号車番号シールが張り替えられており*16、このまま営業運転まで…という感じでしょうか。57編成分しか製造されないのに対しH59が組み込み対象になった以上、編成番号とサロの車番を一致させる可能性はないと見ていいでしょう。

模型としては、今後のサロ製品化時の仕様次第ではありますが、かなりやりやすそうです。車番や所属標記はインレタでどうにでもなりますし、ドアステッカーも全て撤去されていますから少ない加工メニューでバリエーションが楽しめるいい題材かもしれません。

 

端折った部分も多々ありますが、ざっと近年のE233-0の変化を振り返ってきました。個人的な備忘録として、最低限読めるものにはなったかなと思います。今後新たな珍妙編成登場時には追記していくつもりですし、「これも紹介したほうがいいのでは」という編成があればご連絡いただければ幸いです。

 

立石あやめがサロを製品化した時にまたお会いしましょう。それでは。

 

参考文献

鉄道ピクトリアル 通巻No.966 2019年11月号

グリーン車組み込み準備改造 – 4号車の5号車寄り

 

おまけ:搭載クーラーのメモ

あんまり言及してきませんでしたが、E233普通車のクーラーキセは大まかにわけてAU726-A(丸いファン)と-B(六角形)の2種類が存在し*17、検査などで交換されることがあります。レイアウト走行中は屋根が目立つこともあり、クーラーを入れ替えておくと相手にマウントが取れメリハリが出て楽しくなりますから、とりあえず記録した一部の編成と日時をここで紹介しようと思います。なお、ラッピング時のT24など限定品だと製品出荷時点で正しいクーラーキセになってるので、ここでは割愛させていただきます。

 

判例(左から東京方1号車)

A:AU726-A、B:AU726-B、グリーン車、+:先頭車連結部

 

・T1編成(19年8月3日)

AABABBBBBB

・T40編成(23年10月3日) 736T?

ABAABAAAAA

・青665+P525(アドベンチャーライン冬)編成(23年5月16日) 896T代走

ABABBA+BAAB

・H57編成(24年1月31日)試運転

BBBBBB+BBBB

誤り等ございましたらコメント等でご連絡ください~~

*1:森尾電機製・16粒小型LED式前灯と見られる

*2:

気まぐれな中央線民 16/4/17撮影記 LEDヘッドライトになったE233系H58編成

*3:

トタT10編成にホーム検知装置 – 4号車の5号車寄り

*4:正確な日付は不明、おそらく最古の目撃情報

*5:この他にも組成位置変更に伴う連結器交換が行われたそうですが、模型的に再現しづらいので割愛しました

*6:

https://x.com/tobu1819/status/1235804008800866305?s=20

*7:T13は14年、T36は18年に施工され、現状T36にのみ装置を搭載

*8:余談ですが、青661はムコ区で検知器が搭載されたようです

*9:

https://www.jreast.co.jp/press/2022/hachioji/20221216_hc004.pdf

*10:初出はおそらくコレ

*11:

八トタ 横クラ…電車に書かれた「呪文」が消える!?所属標記の今後は | 鉄道ホビダス

*12:

中央快速線E233系グリーン車は114両製造と明記(2両が削減) – 4号車の5号車寄り

*13:

https://x.com/Cocoa_189_510/status/1235727926823247874?s=20

*14:

トタH56編成が組み換え(グリーン車4両を増結) – 4号車の5号車寄り

*15:

トタH53編成既存車から所属表記が消される – 4号車の5号車寄り

*16:

トタH57・T24編成既存車の号車表記が変更 – 4号車の5号車寄り

*17:少なくとも、KATO・TOMIXが分売品として用意しているのはこの2つになります。更にこだわりたい方は3Dプリントなどをご検討ください…