焼け跡とみずたまり

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【ネタバレなし】『たいようのマキバオー』を読んで欲しい

 この記事を開いてしまったアナタ、まずは1話を読んでください。前作を読んでいなくとも、とりあえず読んで欲しい。

 

 いかがでしょうか。「競馬に関する作品を観たい」「主人公がどん底からはい上がっていくのが好き」…そんなアナタはすかさず2話を読み始めたことでしょう。「よくわからなかった」「主人公の目的はなんなの?」「ライバル?みたいな奴がスカしてるな」等々、ページをめくる手が止まった方にも、本作をオススメしたい理由をこれから綴っていこうと思います。

 ネタバレにはかなり配慮しますので、ご安心を。

 

 

”伝説”の影からの脱却

 

 3話まで読んでいただけば理解していただけることではありますが、伝説の10年前=親世代との対比」「大人たち、そして運命に翻弄される苦悩の二つが(特に序盤の)テーマとなっています。順に解説していきましょう。

 

 『たいよう』は徹頭徹尾「誰でもない自分を見つける」ことについてを描いています。いわゆるアイデンティティの確立ですね。過去作のキャラと比較されてしまうというのは2世モノの宿命な訳ですが、本作はかなり意地の悪い形でこれを表現しています。主人公・ヒノデマキバオー(文太)は叔父であるミドリマキバオーとそっくりであるところにのみに価値が見出されており、彼自身の悩みや想いに向き合ってくれる人がいませんでした。ライバル格であるアマゾンスピリットは、地方馬でありながらクラシックに挑戦し続けたサトミアマゾンを父に持ち、父のようになれと期待されることを嫌悪しています。この他にも、カスケードに憧れ自分の境遇を嘆く馬や、そういったアプローチでですら注目されない馬*1など、様々な形で彼らを苦しめます。

 

 現実の競馬というものがそうであるように、競走馬たちは親やこれまでの名馬たちが果たせなかった悲願などを背負わされます。『みどり』の激闘を目にしてきた読者も恐らく、無意識にキャラを重ね合わせてしまうでしょう。競走馬たちを悩ませる偏見に読者も加担してしまうのです。彼らの苦しみを実体験として理解できてしまうほどに共感したくなるキャラが本作の魅力です。(逆に、『みどり』の前提知識を入れずに読んでみるのもいいかもしれません。Twitterで「『たいよう』読んでから『みどり』読んだら神話みたいにみえるかも」という意見を見かけましたが、それはそれで価値ある体験なのではないでしょうか)(追記:やっぱ順に読んでください

 

 

 

望む未来へ。その代償は?

 

 もう一つのテーマが、「運命に翻弄される苦悩」です。もっとかみ砕いて言えば「しがらみからの解放」です。文太の所属する高知競馬は、厳しい財政状況故に文太達に過酷なローテーションを強要します。また、文太は生来から脚に不安を抱えており、その点でも全力を出すことを止められています。文太以外にも「走りたいのに走らせてもらえない」馬が登場するほか、逆に勝たなければ処分される運命に気づいた馬なんかもいて、自由意志を取り巻く諸問題が何度も登場します。

 

 で、物語である以上主人公は自由意志を取り戻すことになる訳ですが、その先に願った未来があるのか?と言われると、そうでもないと答えざるを得ません。更なる高みのために栄光を捨てるべきか?選択した未来に後悔はないか?ということを、様々なシチュエーションから問いかけてくれます。『進撃の巨人』あたりが好きな方にオススメ!!!!

 

 

終わりに

 

 個人的に力説したかったのがこの2点だったのですが、やっぱり熱いレースが最大の目玉なので、某マ娘等で競馬への解像度が上がった方々には是非読んでもらいたい作品です。あと最後に、感想やキャラ名のパブサは控えておいた方がいいです。Wikipediaにも最終盤の展開が書いてあるので、見ない方がいいでしょう。ピクシブ百科事典はかなり情報量が抑えられているので、どうしてもキャラ名を把握したい方はこちらを。

絶対フィールオーライで画像検索したりWikipedia調べたりするな!!!!!!絶対ネタバレ踏むから!!!!!!!!!!!!

 

  改題されてますが、話はそのまま繋がってるのでこっちもちゃんと読んでください。ここからが真骨頂なので

  前作。これありきの作品だけど、読まなくても楽しめると思います

 

*1:フラットビッキーのことなんですけど、この解釈であってるかは微妙かも